疲れているのに眠れない

仕事でへとへとになった日、外回りで一日中動き回った日、一生懸命頑張った日。
「今夜はぐっすり眠れそう」と感じた経験は、多くの方にあるのではないでしょうか。
体を使った分だけしっかり回復する、これはとても自然な営みですよね。

ところが、「疲れているはずなのに、なかなか眠れない」というご相談を受けることがあります。
実は「疲れすぎ」そのものが不眠の原因になっていることは、決して珍しくありません。

漢方の古典『金匱要略 血痺虚労編』には、こんな一文があります。

『虚労、虚煩不得眠、酸棗仁湯主之』
(虚労、虚煩して眠ることを得ざるは、酸棗仁湯之を主る)

意味:心身が消耗し、気持ちが落ち着かず、もやもやした煩わしさで熟睡できない状態には、酸棗仁湯で治療する。
まさに「疲れすぎによる不眠」を記した条文です。

■眠るにも体力が必要

適度な疲労であれば、自然にうとうとしてぐっすり眠ることができます。
しかし疲労が限界を超えると、体は危機を察知して「もうひと踏ん張り」しようとします。
いわば仮性の興奮状態に入ってしまうのです。この状態が続くと、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。
漢方ではこの状態を「虚熱(きょねつ)」と表現します。
体の滋養が追いつかず、熱だけが空回りしているイメージです。
眠れないだけでなく、手足や体がほてる、不快な寝汗をかく、夜中に口や喉が渇く――こうした症状が重なることもあります。

■まずは生活を振り返る

疲れているのに眠れないと感じたら、こんな点を見直してみましょう。
・食事が疎かになり、栄養不足になっていないか
・眠れない夜にスマートフォンやパソコンを長時間見ていないか
栄養をしっかり摂って体を内側から満たすこと、そして無駄な消耗を減らして体力を温存することが、まず大切な一歩です。
それでも改善しない場合は、漢方で体を滋養しながら興奮状態を穏やかに鎮める方法も選択肢のひとつです。

疲れすぎているのは、それだけ一生懸命に頑張っている証拠。
でも眠れない夜が続くなら、それは体が発しているSOSかもしれません。
時には自分を労わることも、大切なセルフケアですよ。

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