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昆虫と漢方にまつわる忘れられない思い出

娘がアゲハ蝶の幼虫を飼い始めました。
僕は虫が大の苦手です。
だから、できることなら飼いたくない。これが本音です。
でもいつかこんな日が来るとは薄々感じていたので、しょうがないですね。

こんにちは。漢方カウンセラーの石井です。

昆虫で思い出した、昆虫と漢方にまつわる忘れられない思い出があります。
あれは都内の老舗漢方薬局に勤めていた頃のこと。
先生が漢方相談をし、その漢方処方を調剤するといった生活を送っていました。
その日は比較的相談が少ない日。
僕は調剤室の中の生薬を補充したり、整理したり。
生薬がところ狭しと並んでいる棚の奥の方に
見慣れない茶色いA4サイズくらい封筒を発見しました。
厚さは3cmくらでしょうか。
何が入っているか気になりますよね。
もちろん中を確認してみました。

わっ!!!!!!
思わず封筒を机に置き放ちました。
中に入っていたのは黒光りする物体
すぐに何だか分かりました。
世間でも毛嫌いされているあいつです。
サイズは大きめ
それが整然と並んでいるんです。
今思い出しただけでも背筋がブルっとします。
そう、ゴキから始まり、ブリで終わるあいつです。
文字として書くのも気か引けるのでⒼと表しますね。

何故ビニールパックにきれいに納められ、
生薬棚にあったかというと、
Ⓖは古くから生薬として使われているからなんです。

生薬名は「䗪中(しゃちゅう)」
血の流れをよくする目的で使われます。

驚きと恐怖で心臓がバクバクしながらも、
とりあえず元の場所に戻しておきました。
そしてその場所にはなるべく近づかないように、
深く深く肝に銘じて、心の距離を大きくとりました。

そんな衝撃も時間と共に記憶の片隅の追いやられます
日が経ち、毎日漢方の調剤に明け暮れる日々。
そんなある日。
たまたま、調剤室には僕一人。
先生は漢方相談中。
相談の途中で先生が調剤室に入ってきて、生薬棚の奥の方を探し始めます。
そして、例の茶色い封筒を手にもって、相談机へと帰っていきました。

えっ!?
もしかして使うの!?

もう心臓がバクバクです。
ただでさえ虫が苦手。
Ⓖなんて以ての外。
虫が好きな人でも、Ⓖも好きという人はあまり聞いたことがありません。
でも調剤室には一人きり・・・。

・・・やるしかないか。
心を決めました。
仕事している以上、僕もプロです。
苦手だから、そんな理由で調剤できないなんて言えません。
相談に来ている方に失礼です。
この漢方を服用する方が、勇気が必要かもしれません。
そう心に決めて、調剤室で自分で自分を鼓舞していました。

でも結論をいうと、結局使うことはありませんでした
Ⓖは使わずに、他の処方になりました。
あの時の安堵感は今でも忘れられません。
この一連の流れは、思い出として心に強く刻まれています

昔の人は凄いなぁって思います。
漢方として使おうと思ったんですからね。
この他にも生薬として使われる動物や昆虫はいくつもありますよ。
あっ、僕の漢方で昆虫を使うことはありませんのでご安心下さい。

アゲハ蝶の幼虫から呼び覚まされた思い出でした。
小谷薬局 石井正久

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石井正久/マサ

上毛電鉄「中央前橋駅」から徒歩1分にある小谷薬局の4代目です。 「漢方で改善できる症状を確実に良くしていく」をモットーに子宝・婦人病・気象病を中心に漢方カウンセリングをしています。オーダーメイドの煎じ漢方もやっています。薬剤師。ラグビー・筋トレ・甘いもの好き。
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