8月も下旬に入り、暦の上ではもう秋を迎えています。
とは言えまだまだ暑さや湿度も厳しいものがあります。
前回は汗をかかないことによって身体の内側に
熱がこもるタイプの不眠について書きました。
それとは逆に、夏には汗をかいてエネルギーを消耗したことによって
起こる不眠もあります。
東洋医学では五臓六腑という考えがあります。
人間の内側は5つの臓、それと表裏を成す6つの腑から
成り立っているという理論です。
五臓とは肝(かん)・心(しん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)です。
夏にかく「汗」(夏に限ったものではありません)は
五臓のうちで心と関係が深いとされています。
この「心」の働きは、
①身体全体に血液を送りだす
②精神・情緒・意識・思考などをコントロールする
と言われています。
①に関しては、心(しん)を心臓と捉えると分かりやすく
②に関しては、心を訓読みすると「こころ」になるので
イメージしやすくなるかと思います。
汗を沢山かくと心のエネルギーが消耗されてしまいます。
エネルギーが消耗されると②の精神活動をコントロールする働きが十分にできなくなり、
不眠につながっていきます。
十分な睡眠がとれないと心のエネルギーが補充できないので、
更に不眠につながるという負の循環が起こってしまいます。
また、五臓では心から脾へとエネルギーを送る関係を持っています。
(脾は消化器系のような役割を持っています)
心がエネルギー不足になると、脾に送るエネルギーも少なくなるので、
脾もエネルギー不足になります。
夏の終わり(長夏)は脾と関係が深い時期でもあります。
脾が弱ると食べ物からエネルギーへの変換がうまくいかなくなるので、
身体のエネルギー不足の解消が難しくなります。
こうしたことから夏に汗をかいたことで起こった不眠は
「心」と「脾」の両方が弱った状態なので、
両方ともに補う必要があります。
生薬では竜眼肉や当帰、酸棗仁、遠志などで心を補います。
人参・黄耆・甘草などで脾を補います。
夏の疲れを秋に持ち越さない為にも、
しっかりと質の良い睡眠を摂るようにしましょう。
石井正久/マサ
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