ブログ 葛根湯で副反応の予防ができる!? 投稿日: 2021年7月23日2021年7月23日 石井正久/マサ こんにちは。石井です。 「ワクチン接種の前に葛根湯を服用すると発熱の予防ができる」 「前もって麻黄湯を服用しておくとワクチン接種しても発熱しない」 こんな噂をちらほら耳にします。 もし漢方で副反応を予防できるなら非常に助かる話ですが、 これってどうなんだろうと漢方的に考えてみました。 上記の噂に出てきた漢方薬をそれぞれ見てみると、 葛根湯(かっこんとう) 「葛根・麻黄・桂枝・芍薬・大棗・生姜・甘草」 麻黄湯(まおうとう) 「麻黄・桂枝・杏仁・甘草」 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう) 「麻黄・石膏・生姜・大棗・甘草・白朮」 どれも発表剤(解表剤)に分類される漢方処方です。 発表剤とは発汗を促して 汗と共に邪実(寒気、発熱、頭痛などの風邪症状を引き起こすもの)を追い出す漢方です。 風邪のひき始めに葛根湯やインフルエンザ初期に麻黄湯などが有名なように 風邪の初期症状などに使われることが多い漢方です。 どのタイミングで服用するのが効果的か ・前もって服用する 発汗を促す漢方を前もって服用すると、発汗が促されます。 ただし、邪実という発熱や寒気などの症状を引き起こす原因が入ってきていないので、 ただ発汗を促すことになります。 筋肉量もしっかりあって、元気な方なら特に変化はないかもしれません。 あまり筋肉量がない方や、疲れている方、食欲ない方が服用すると 強く発汗を促してしまうこともあります。 発汗量が多いと体力も奪われます。 そうなると漢方を服用することが体調不良にもつながってしまいます。 漢方的には発熱の予防効果もないので、 このタイミングはオススメできません。 ・ワクチン接種直後に服用する ワクチン接種により邪実が侵入→それによって発熱が引き起こされている。 こう仮定すると、邪実が入ってきた初期に服用するのも効果があるように考えられます。 ただ、厚生労働省のデータによるとファイザー社のコロナワクチン「コミナティ」を接種後に37.5℃以上の発熱の副反応が出た割合は1回目接種後は数%、2回目接種後で40%ほどです。半数以上の方は発熱しません。 つまり葛根湯を服用してもしなくても6割は発熱しないということ。 仮に噂を信じて葛根湯を服用したら、その効果は別として60%は発熱しない=噂が正しいと思ってしまうということです。 「ワクチン接種=邪実の侵入」 そもそもこの仮定が合っているかどうかも分かりません。 人によっては無症状で済むはずなのに、 漢方の服用で発汗が促されてしまう恐れもあります。 だからこれもオススメできないです。 ・症状が出てから服用する やはり葛根湯や麻黄湯などの発表剤は症状が出始めに服用するのがいいです。 ただ注意が必要なのは以下のポイント。 ・タイミングを逃すと効きが悪くなる ・症状にあった処方でないと効果もイマイチ 少し寒気を感じる、頭痛がするなど症状の出始めに服用するのが効果的です。 ただ、副反応は人によって症状が異なるので、一概に葛根湯がいい、麻黄湯がいいとも言えないです。 僕が経験した副反応は微熱、食欲不振、倦怠感、寒気がしたと思ったら熱感に変わってきたなど葛根湯が合わない症状が出ました。 発熱しても寒気が伴っているなら、葛根湯や麻黄湯を使うタイミングです。 もしすぐに相談できる環境があるようなら、 漢方の専門家に相談した方がいいです。 葛根湯を前もって服用して、ワクチン接種後に発熱しなかった人もいるのだと思います。 でもそれが葛根湯の効果によるものなのか? そもそも発熱しなかったのか? ここの検証が必要です。 葛根湯を服用→ワクチン接種→発熱しなかった→葛根湯を服用すると発熱しない こう結論づけてしまうと、 ・雨乞いをした→雨が降った→雨乞いすると雨が降る コレと同じになってしまいます。 服用することで体力を奪ってしまうこともあるので、 症状がないのに事前に飲むのは避けたほうがいいです。 この先、症例が増えて葛根湯などの漢方と副反応の因果関係の研究が進めば 新たな発見があるかもしれませんが、 (ただその研究がされる可能性も少ないかなと。。。) 漢方薬はその歴史と共に使用経験が積み重ねられてきた経験医学です。 もし発熱の予防に使えるとしたら、先人がそういった使い方を残しているはずです。 僕はそういった使い方を目にしたことも耳にしたこともありません。 そういったことも考慮するとワクチン接種前に葛根湯を服用するのは、 オススメはできません。 ワクチンを接種したら無理せずにゆっくり体を休める。 まずはこれが大切です。 その上で副反応の症状を感じてから漢方を使った方がいいです。 また、副反応は長くても数日で消失します。 もしどの漢方を使うべきか分からない場合は、 無理に漢方を服用するよりも 解熱鎮痛薬などで症状を抑えた方がいいですよ。 The following two tabs change content below.この記事を書いた人最新の記事 石井正久/マサ 上毛電鉄「中央前橋駅」から徒歩1分にある小谷薬局の4代目です。 「漢方で改善できる症状を確実に良くしていく」をモットーに子宝・婦人病・気象病を中心に漢方カウンセリングをしています。オーダーメイドの煎じ漢方もやっています。薬剤師。ラグビー・筋トレ・甘いもの好き。 最新記事 by 石井正久/マサ (全て見る) お知らせ - 2024年4月6日 花粉症で使う漢方「小青龍湯」の注意点 - 2024年3月19日 漢方でダイエット - 2023年8月17日 共有:TwitterFacebook