暑い日が続いています。
今年は9月末まで平年以上の暑さという予報が出ているようです。
暑さで頭が働かなくなったり、
熱中症とまでいかなくても何となく頭がボーっとしてしまいますね。
頭と言えば、最近物忘れで話題の生薬に「遠志(おんじ)」があります。
2015年にはこの遠志エキスが
「中年期以降の物忘れの改善薬」の有効成分として認められました。
遠志は主に中国北部を産地とする多年生草木「イトヒメハギ」の根を
乾燥させたものです。
遠志という名前は
「この薬を服すれば能(よ)く智を増し、志を強くする」
といった薬能に由来しているそうです。
最近ではこの遠志を有効成分とした医薬品を
ドラッグストアなどでもよく目にします。
「中年期以降の物忘れの改善」
素敵な響きの言葉ですね。
生薬や漢方の可能性に注目されることは嬉しいことです。
ただこの効能は加齢に伴う物忘れのことを言っているので、
アルツハイマーなどの認知症の改善を言っているわけではないようです。
遠志は漢方の処方でも広く使われている生薬です。
朱砂安神丸・帰脾湯・加味帰脾湯・人参養栄湯・加味温胆湯などにも配合されています。
また、遠志は養心安神薬に分類されています。
安神薬(あんしんやく)とは、
主に安心定志すなわち精神安定・鎮静の効能をもつ薬物のことです。
この効能から遠志エキスが「物忘れの改善」という効能につながったのかもしれませんね。
遠志は民間薬として使われていた歴史はあるようですが、
漢方処方として単味で使うことはほぼありません。
漢方を扱うものとしては、この遠志だけのエキスで
「中年期以降の物忘れの改善」という効果を得られるのか
ちょっと疑問に思うところもあります。
もちろん厚生労働省が認可した効能なので、否定するわけではありませんが・・・
ちなみに日本漢方生薬製剤協会の調査で
中国産原料生薬 使用上位30品目の価格指数というデータがあります。
簡単に言うと、「中国産の漢方原料でよく使われるものがどれくらい価格が上昇しているか」
というデータです。
これによると2006年の価格を100とすると、
2014年には250に迫る指数になっています。
つまり、よく使われる生薬の価格がここ8年で2.5倍くらいに上がっているということです。
中国国内や近隣諸国での需要の高まりや、円安など様々な要因が価格に影響しているようですが、
生薬は植物・鉱物・動物といった限りある天然資源です。
化合物のように合成したり大量生産することができませんので、
限りある資源を大切に使っていかなければなりません。
遠志エキスも効能だけが独り歩きしないように願っています。
色んなメーカーが飛びついて遠志が不足したり、さらに価格が高騰して
本当に必要としている人に届かなくなってしまったら困ってしまいます。
小谷薬局で扱う漢方も必要な方に必要な分だけきちんとお届けできるように
更に漢方を研鑚していきたいと思います(^^)/
漢方相談・子宝相談・冷え症相談
前橋の漢方専科 小谷薬局
石井正久/マサ
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