子宮筋腫による痛み　症例

相談に来店されたのは40代女性。
朗らかな笑顔の奥に、
何かに必死に耐えている疲れが表れていました。
この方の筋腫との付き合いは10年以上。
30代のころに受けた婦人科検診で見つかりました。
最初は小さい筋腫が２つほど。
それほど大きな症状もないということもあり、
経過観察で様子を見ていきました。
次第に大きくなっていく筋腫。
それに伴って重くなっていく症状。
「痛み」に悩まされることが多くなりました。

数年後、かなり大きくなった筋腫に腺筋腫も併発していることが判明。
その大きさのため、切除は難しく、
医師からは子宮全摘か薬物療法を提案されました。
悩んだ末に下した決断は「経過観察」
どちらの治療も受け入れることができませんでした。

その後は痛みとの戦いです。
通常の生理痛が終わるにかけて、徐々に激痛が始まります。
下腹部全体が腫れて張ってきます。
筋腫が大きいため、仰向けで寝るのも辛い。
1日2回の痛み止めで何とか生活している状態。
筋腫とそれに伴う痛みを抱えながら、
何とか痛みのコントロールができないかと
ご相談にいらっしゃいました。

漢方では子宮筋腫やその痛みを「瘀血」と捉える場合があります。
瘀血とは血の流れが滞った状態。
「不通則痛」（通ぜざれば、則ち痛む）
痛みは流れが通じていないことろに起こるという考えからです。
だから治療としては活血化瘀。
瘀血を改善することで、痛みを改善する。
また、冷え性が強かったり、生殖器での疾患であることから、
腎のエネルギーが不足した「腎虚」と考える場合もあります。
この場合の治療は補腎。
腎のエネルギーを補うことで冷え性や筋腫の改善を図る。

ただ、注意しなければいけないのが、
子宮筋腫＝瘀血、腎虚ではないということ。
病名だけでは病態は判断できないし、
ましてや漢方を決めることはできません。
そして、理論上では合っていても、
その理論に基づいた漢方を使って実際に効果があるのか。
これが大切です。

お身体の状態を詳しく伺いました。
そして、「瘀血」と「腎虚」が原因であることを否定して考えました。
何故ならその所見がないから。
身体の状態で瘀血や腎虚を示す根拠が見られません。
時には理論を捨てて考えなければならない場合があります。
それは理論が絶対に正しいとは限らないから。
漢方理論もアップデートしていかなればなりません。
この方の痛みを考える上で
「生理が終わった後に痛みが強くなっていく」
ここがポイントでした。
そこから筋腫による痛みを可視化して漢方を考えます。
そしてまず14日間服用していただきました。

この14日間はいつもドキドキします。
お渡しした漢方には自信はある。
でもどれほどの効果を発揮するか。
これは服用してみないと分からない部分もある。
そして、14日後、嬉しい報告をいただきました。
痛む回数や時間が激減したと。
筋腫の大きさ自体には変化がないが、
下腹部の腫れや痛みが減っている。
激痛だった痛みが和らいで、痛みを服用する回数が激減したと。

その後も体調に合わせながら漢方を調整して、
痛みをコントロールを継続されています。